虚々実々日記

これは僕(古藤)が日々感じていること、考えていること、体験したことを日記風にまとめたものです。
一部フィクションもありますが、概ね晴れるでしょう。

クリスマスの夜はみなさんいかがお過ごしでしたでしょうか。
私は一人さびしくスタイニーの小川さん(十三のバー)のところにおりました。

訪れる人もいない究極のレトロバー「スタイニー」に行った私がばかだった。
クリスマスの夜にこんなところに来る人はいないだろう、という予測通り、
誰もいない店では小川さんが一人ポツンと新聞を読んでいた。

「あっ、ことちゃん。いらっしゃい」
僕はいつものようにハイボールを頼み、小川さんはいつものように頼んでもいないビールを開け、自ら消費し始めた。
二人とも風邪をひいているので、しょっちゅう鼻をかんでいた。

夜も更け、お互いに酔いが回ってきた時に小川さんがポツリポツリと話し始めた。
「今日はクリスマスか…。ことちゃん、わしの親父はひどい男でな。なにかにつけ、わしをなぐりおったんじゃ。
こんな木の棒でなぐりおったこともあるんじゃ」
小川さんはウルウルモードで後ろを向いて鼻をかみ始めた。
そして、テイッシュをわしずかみにし、激しく鼻をかんだ小川さんが振り返った時、
鼻の下には一筋のティッシュの切れ端がへばりついていた。
…どこかで、こういうものを見たような気がする、…そうだ、バカボンのパパなのだ。

指摘しようとした僕の声を遮り、小川さんは話しを続けた。
「そんな親父が何を思ったか、クリスマスにケーキを買ってきおったんじゃ。
そして、上機嫌で歌いだしたんじゃ。ジャングルベー、ジャングルベー、ジャング ル、オンザ、べー。
それから、わしはずーっと、ジャングルの歌じゃと思うとった。
西洋人はクリスマスにジャングルの歌を歌うとは変わっとるわい、と思うとったんじゃ」

そして、鼻の下にティッシュの切れ端をつけたバカボンのパパは「ジャングルベー、ジャングルベー…」と歌い続けていた。

「ジャグルベーか…。こんなクリスマスの夜を過ごしているのはたぶん、俺だけだろうな」と
僕は静かにハイボールのグラスを傾けた。

ふ〜。

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